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平成20年 (ワ)第943号 損害賠償請求事件
原 告 原渕茂浩
被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名
平成20年10月27日
岡山地方裁判所第1民事部 御中
被告3名訴訟代理人弁護士 香 山 忠 志
準備書面(2)
目標数の決定に内心不満があったとしても、原告は利害損失を自ら判断して自己の意思に基づき目標数を合意し、あるいはこれに特段の異議を述べず、更に注文部数も自らの意思に基づいて注文しており、その決済も何ら問題なく行われてきており、被告らには何らの不法行為もない。
第1 原告と山陽新聞販売との販売委託契約
1 現在、被告岡山東販売管轄の販売センターは11店(直営店9店)、被告岡山西販売管轄
の販売センターは8店(直営店11店)である。もともと、販売センターは主に増紙(地域に根ざした人に委託販売をお願いした方が増紙効果がある)の効果的対策として考え出されたものである。岡山市富田、神田町1、2丁目ほかを販売地域とする岡輝販売センターは平成10年までは、その一部区域の清輝橋1丁目、2丁目を区域とする清輝橋北販売センター(長田忠俊販売センター長)に販売委託していた。長田氏が体調を崩し、辞めることになったことから、清輝橋北販売センターの区域に富田、神田町1、2丁目を加えて区域を再編し、1年間山陽新聞販売の岡輝支店として直営にしていた。その後、今販売センターの遠部氏から原告を紹介され、当時の営業本部長鈴木勝利氏、社長近常寧氏が面談し、岡輝販売センターを任せることとし、原告にその販売区域について販売委託したものである。
なお、原告はその直前まで、毎日新聞大阪本社と販売契約を結び毎日新聞藤原販売所長として、山陽新聞販売岡輝販売センターと同様の仕事をしていたが、そこでも購読者を大幅に減らして毎日新聞大阪本社に多額の損害を与え契約を解除されていたことが、最近になって判明した。
2 原告と山陽新聞販売とは平成12年4月24日取引開始日を同年5月1日とする販売委託契約書を締結した(乙7)。この契約書には第8条に「乙は甲に対して5日仕入数をもって取引部数とし、甲はその取引部数で代金額を算定するものとする。」とあるほか、第10条で「乙は甲より指示された、新聞折込広告を責任をもって新聞に折込配布する。毎月の5日の仕入数を当月の折込部数とし、甲は乙に対し、別紙記載の折込手数料を翌月5日に乙に支払うものとする。」、第14条に「本契約の期間は契約成立の日から満1年とする。」とあるほか、更新条項の記載がある。その後、経緯は定かではないが、原告と山陽新聞販売とは平成13年12月1日付けで新たな販売委託契約書を締結している。(乙8)。第5条で原価・手数料は別途定めるとされたほかは、基本的には乙7と変わらないが、異なった用語が用いられている。例えば、第7条の代金額の算定について、「毎月5日の定数をもって取引部数とし・・」とある。この定数とは仕入部数のことである。5日の仕訳日報表によって確定した数という意味で、定数という言葉を使っているものであり、予め定められたという意味で、定数という言葉を使っているわけではない。第8条で「甲は毎月5日の朝刊定数を基に折込手数料を算定し」とあるのは、従来の契約書では仕入部数となっており、夕刊の部数も含むのかとの疑念が指摘されたことから、従来の慣行を明確にしたものであり、何ら変更はない。
なお、山陽新聞販売が、原告に販売委託した区域は乙7、8と変わらず、仕訳日報表(乙13)の2区から18区の区域である。
3 原告は、開設当初、張り切って営業をしていたようである。山陽新聞販売との取引部数は、全て実売したとの報告を原告から山陽新聞販売が受けている。そして、原告の目標数の合意、取引部数の注文も毎回スムーズにいっており、原告から殊更クレームがついたということもなく、平成18年12月に初めて取引部数(11月分)の決済ができない事態が発生するまでは、決済についても約定どおりなされており、特別に問題があるとは思っていなかった。平成18年12月に決済ができなかった11月分の代金は原告と被告岡山西販売との間で、原告から預かっていた信認金を充当することが合意済みである(乙11の4)。こうしたことがあったので、被告岡山西販売は契約解除あるいは更新拒否を検討しなければならないとの含みを持っていた。平成19年3月12日原告が母親や友人ら数人への置手紙(被告らはその内容は知らない。) を残し、従業員や親族、販売会社へ何の連絡もなく突然失踪した。被告岡山西販売は原告との間の販売委託契約を、同月13日付けで解除した旨を、同月20日付け内容証明郵便 で原告の実家に送付した(乙9の1、2、原告は受領済みである)。被告岡山西販売は、原告が失踪して後、関係各方面を調査したところ、開店1、2年後から、集金管理も読者管理も杜撰な状況であり、更には多年にわたり虚偽の実売報告をしてきた(虚偽の領収証がたくさんあった)ことが分かり、唖然とした次第である。そして、関係各方面への謝罪、配達、集金、読者管理その他、岡輝販売センターの建て直しに大変苦労した経緯がある。詳細は後に述べる。
4 販売会社と販売センターとの関係
(1) 訴状請求原因には圧倒的優位、圧倒的支配下、圧倒的劣位とかの言葉が多用されている。販売センターが被告山陽新聞社、被告岡山東販売、被告岡山西販売の圧倒的支配下にあるとの認識は大いなる誤りである。原告はかつて山陽新聞販売(現在の被告岡山東販売)と販売委託契約を結んでおり、平成18年12月の会社分割後は被告岡山西販売が原告との間の権利義務を引き継いだ(乙10)。しかし、販売会社と販売センターとは共存共栄の関係にあり、販売センターはいわば販売会社のパートナーとして位置づけられる。販売会社は、販売センターとの販売委託契約に基づいて取引しており、購読者の勧誘、読者管理、配達、集金等の販売業務一切を販売センター長に委ねている。基本的には、販売センターの区域内では、販売会社として購読勧誘などはしない方針にしている。従ってその区域で、販売センターが購読者を増やせば販売センターの収益となる。販売センターが営業努力により顧客を伸ばせば、それは販売会社の利益にもつながる。逆に販売センターが区域内の顧客を失えば販売センターの損失ともなる。
販売会社と販売センターとの契約期間は1年間とされており、期間満了2ヶ月前に異議を述べれば契約は更新されないこととなっている。また、どちらか一方に販売委託契約の契約違反があれば、他方は契約期間内といえども、法廷解除権、約定解除権の行使により契約を解消することもできる。契約期間による縛りがあるのは僅かに1年間であり、販売センターが販売委託契約による利益を享受できないなら、契約を更新しなければすむことである。このように、販売会社と販売センターとは共存共栄のパートナーであって、販売センターが販売会社の圧倒的支配下にあるはずがない。新聞という商品の供給は販売会社を通さねばならず、その点販売センターが販売会社に支配されているという思いがあるかもしれないが、それは継続的な供給契約の特性に基づくものであり、他にも代理店契約やフランチャイズ契約などがあるが、同様である。
(2) 山陽新聞販売は各センターを開設するに当たって、開設の土地建物は山陽新聞販売所有の土地建物を市場価格よりかなり安い価格で貸与している。原告に販売委託した岡輝販売センターとて同様である。原告は開設に当たって、山陽新聞販売の直営の支店として、採用ないし委託していた配達人や集金人をそのまま引継ぎ、折込広告の機械のリースも引継ぎ、いわば開業については新たに信認金(乙7の第13条、乙8の第11条、乙11の1)を入金してもらった程度で開店している。原告を含む販売センターと販売会社とが共存共栄のパートナーであることは以下の事情からも明らかである。
① 販売センター長会議の開催
山陽新聞販売、被告岡山東販売、被告岡山西販売とも毎月、販売センター長を招集して販売センター長会議を開催する。
会議には全販売センター長、本店からは社長、営業本部長、各部長、副部長が出席する。
この席で、販売会社本店の通達をはじめ、出席者で知恵を絞り、営業戦略、営業戦術を協議している。また、その席で、対抗する朝日、読売などの全国紙の販売所やセールススタッフの動向についての情報交換を密に行っている。
原告は平成14年から2年間、販売センター長の取りまとめ役ある販売センター幹事の役職に就いたことがある。
② 年賀式や創立記念式典の出席
席上、奨励金の授与、支店・販売センターの従業員拡張の成績優秀者の表彰もしている。
③ 新築マンション等の応援拡張
新築マンションができると、販売会社の社員、販売センター長が力を合わせて拡販のために営業を行っている。
④ 補助関係
販売会社は販売センター互助会へ補助金(毎月1販売センター4,000円)を支出し、その資金で年1回、販売会社幹部も同行し、販売センター長対象の1泊2日の懇親旅行を開催している。
新聞の雨濡防止用のビニールを無料で支給している。
販売会社は拡張用景品やセールスの拡張料を半額補助している。
⑤ ゴルフコンペの開催
販売会社の社員、販売センター長でゴルフ部を組織し、定期的にゴルフコンペを開催し、懇親を深めている。
以上のことからしても原告が圧倒的劣位だとか販売会社の支配下に置かれたとの主張は的外れである。
第2 目標数と取引部数の決め方
1 被告岡山東販売、被告岡山西販売は共に販売会社であり、山陽新聞の売上を伸ばすのが営業目的である。販売センターも、その目的を理解して契約を締結している(乙7の第5項・第11項、乙8の第4項・第9項参照)。
2 山陽新聞販売当時の目標数の合意
(1) 目標数についてはその年によって異なるが、概ね6ヶ月ごとに、その区域の世帯数の増減と市場性を基本として、販売会社の営業本部で素案を作成する。例年、基本的には4月と10月頃の2回行い、上期(12月から翌年5月)の目標数の素案を、翌年4月頃に下期(6月から11月)の目標数の素案を作成するという具合である。その素案が出来上がると、販売センター長の意向を聴取し、目標数を調整合意していた。具体的には販売センター長に販売会社まで出向いてもらい、あるいは、販売会社の担当部長が現地に赴き、センター長と合って調整合意するのである。
(2) もっとも、平成19年度上期(平成18年12月から平成19年5月まで)の分についても会社分割の作業に追われ、目標数決定の作業が遅れ、一部の販売センターにはファックス送信した経緯がある。原告の目標数については、山陽新聞販売の連絡用ボックス又は訪店時に持参した可能性がある。しかし、その場合でも、原告はその示された目標数に多少不満があったのかもしれないが、結局は納得のうえで、平成18年12月以降翌年平成19年3月分まで、毎月、「1日数」の仕訳日報表、そして、「5日数」の仕訳日報表の数値を自ら記載し、有代紙・無代紙を含めた部数を被告岡山東販売・岡山西販売に注文しているわけであり、任意の注文といえる。(乙13)。
2 取引部数の決定
(1) 販売センターは毎月2回(月末と4日前後)にわたり、1ヶ月分の仕入部数を仕訳日報に記載して山陽新聞販売の本店へ提出(主としてファックス送信により提出される)するよう従来からの慣例によって運営してきている。提出日は毎月山陽新聞販売本店総務部が提出日時の指定のある業務日報表を各販売センターに配付し、かつ、ファックスにて連絡することによって知らせている。毎月月末に提出するものを「1日数」、毎月4日前後に提出するものを「5日数」と呼んでいる。例えば、8月末までに9月分の「1日数」を提出するがこれは9月分の予想であり、9月4日前後には9月分を「購読する。購読しない。」の新規顧客の購読意思や従来の購読者の継続購読の意思が判明するので、「5日数」の仕訳日報表を提出し、これが9月分の各販売センターからの確定の注文部数となる。乙7の第8項「5日仕入数をもって取引部数とし」、乙8の第7項「5日定数をもって取引部数とし」とあるとおりである。
仕訳日報には、「セット、朝刊、夕刊、その他デイリースポーツ」の有代紙のほか無代紙(無料で配付される新聞紙)も含め、注文部数が記載されている。なお、ファックスによる提出がない場合は、販売会社の担当者の柳生久美子(平成8年10月以来ずっと担当し、現在も被告岡山西販売で同じ仕事を担当している)が各販売センター長に電話を架けて「5日数」の仕訳日報表をファックスするよう促し、なおも提出されない場合は柳生久美子氏が電話をかけて「セット、朝刊、夕刊、その他デイリースポーツ」の有代紙のほか無代紙も含め、注文部数を確認していた。(乙18)。
(2) 5日数の仕訳日報表を受け取ってから以後の手続きであるが、柳生久美子氏は「5日数」の仕訳日報表は、確定注文部数なので、この数値を「部数報告受書」(これは確定注文部数をパソコンに入力するためのメモ用紙)に転記し、部数入力担当者(安井忠夫氏)に手渡していた(これを「定数報告」と社内では呼んでいる。注文の確定部数を報告するという意味である)。「部数報告受書」は入力後廃棄されるが、「5日数」の仕訳日報表は柳生久美子氏においてファイルに綴じて残している(「1日数」のものは予想なので廃棄しているのが通常である)。柳生久美子氏が保管していたファイルに綴じられている原告の「5日数」の仕訳日報は乙13のとおりである。乙13の5日数の仕訳日報の注文部数は原告自身が自ら注文した部数であり、これが乙7の第8項の「仕入数」、乙8の第7項の「取引部数」となるのである。販売会社がプラス1の増紙作戦を展開していた時は、原告から5日数で注文してきた仕入部数は目標数に1部上乗せし注文するのが常であった。
3 「セット、朝刊のみ」について目標数・取引部数を原告が下げなかった理由
原告は夕刊のみの目標数を引き下げて欲しいとの申し出をしたことがあり、夕刊の目標部数を下げたことがあったが、「セット、朝刊のみ」の目標数も取引部数の引き下げについては真剣に申し出ることはなく、下げることはなかった。これは第1に、折込広告の収益が取引部数と連動していることによる(乙7の第10項、乙8の第8項)。原告と山陽新聞販売(現在の岡山東販売)ないし被告岡山西販売との取引額は年間1億円前後にのぼり、販売センターとしては規模の大きな業者である。折込チラシの広告による収益も年間2000万円を超えていた(準備書面(3)参照)。第2に、原告が目標数、取引部数を下げるということは、販売センターとしての業績が低迷していることであり、業績低迷ということになれば、乙8の第12条に基づき山陽新聞販売(現在の被告岡山東販売)ないし岡山西販売が、契約更新を拒否することにもなりかねない。かくして原告としても目標数、取引部数を下げることには消極的にならざるをえなかった。原告失踪後に判明したことであるが、長年にわたり虚偽の領収書まで作成して実売部数を多く
見せかけようとしたのも(後述のとおり)、販売委託契約による利益を失いたくなかったからであろう。
更に、原告が目標数プラス1部を注文してきたのは、奨励金規定(乙17)に基づき毎月1万円の奨励金が欲しかったからと考えられる。このように原告は自らの意思で目標数を合意し、あるいは特段の異議を述べず、注文した部数の支払いを完済してきたものであり、これが「押し紙だ」とか「不法行為だ」とか、後になって主張するのは見当違いもはなはだしい。
第3 販売センターの実売部数の把握について
被告らに原告の実売部数の把握は困難である。
1 被告山陽新聞社には、原告の実売部数などは、原告と直接の取引関係にないため全くつかめない。山陽新聞販売(現在の被告岡山東販売)、被告岡山西販売は原告と直接取引関係にあったが、原告の実売部数の把握は困難である。原告の自主申告により把握するほかない。
2 被告岡山東販売、被告岡山西販売といった販売会社も実売部数を把握する仕組みになっていない。各販売センターは5日数の仕訳日報表を提出した後の翌日の締め切り時間までに、山陽新聞販売本店に「読者登録票」(新規読者登録及び住所氏名の変更をするもの)を記入したものを提出することになっている。それを販売会社の柳生久美子氏が集めて山陽計算センターへ提出することになっている。山陽計算センターでは、「読者登録票」と「増減簿」を基に発行表(これは領収書を発行する集計表(有代部数表)というものである)・読者台帳(これは毎月発行し、区域別に読者データー(口座振替、領収書の内容、契約期間、過去データーなど)を記載しているものである)・領収書(これは集金人が集金に行く際、読者へ手渡すものである。購読者に渡す領収書の控えとして残る半券一枚に印刷されているものである)を作成し、販売会社へ返却される(会社分割後は被告岡山東販売と西販売へ別々に返却される)。担当者の柳生久美子氏が、返却されたら直ちに「読者登録票」と「増減簿」、「発行表・読者台帳・領収書」を各販売センターの専用ボックスに入れる。柳生久美子氏その他の者もこれらの帳簿類の内容を見ることはない。(乙18)。
なお、原告が失踪してから、架空の領収書が多数見つかっている。
このことは準備書面(3)のとおり。
平成20年(ワ)第943号 損害賠償請求事件
原 告 原 渕 茂 浩
被 告 株式会社山陽新聞社ほか2名
2009年1月13日
準備書面(2)
岡山地方裁判所第1民事部合議係 御中
原告訴訟代理人
弁護士 位 田 浩
本準備書面は、被告らの平成20年10月27日付準備書面に対する反論を行うものである。
記
第1 上記被告ら準備書面(1)第1に対する反論
1 公正取引委員会告示第9号(甲7)の「発行業者」には、日刊新聞発行業者の子会社たる新聞販売会社も含むと解すべきであることについて
(1) 被告らは、上記告示の第3項の「発行業者」は「日刊新聞の発行を業とする者」であり、山陽新聞販売(被告岡山東販売)や被告岡山西販売はこれに該当せず、同告示の適用対象ではないと主張し、その根拠として、①特殊指定により適用を受ける事業者の範囲を明確にできること、②同告示の平成11年の改正時に「発行業者」に同被告らのような販売会社を含むかどうかといった議論がなされていないこと、③同告示に違反して公取委による排除措置命令を受ける者に販売会社が含まれると解することは同命令に違反すると刑事罰がある以上拡張解釈として許されないことをあげている。
しかし、被告らの主張は形式論理にすぎず、あるいは法的根拠のないものであって、いずれも失当である。
(2) 公取委は、新聞の乱売合戦による悪癖を規制するために今から50年以上も前の1955(昭和30)年に「新聞業における特定の不公正な取引方法」を指定した。すでにそのときから、実際に販売可能な部数を超える「押し紙」を新聞社が販売店に供給する行為については、販売店に不利益をもたらす不公正な取引として禁止されてきた(乙2・6)。
このような告示の趣旨は、経済的劣位に立つ販売店が不当な不利益をこうむらないようにすることにより販売店の自由な事業活動を保護することを目的とするものである。(甲6)。したがって、本件のように、戸別配達を行う販売店に新聞を供給する販売会社が発行業者と同じく実質的に優位的地位にある場合には、第3項の「発行業者」には、販売会社を含むものと解することが法規則の趣旨に合致するものといわざるをえない。しかも、本件の場合には、販売会社は発行業者の支配化にある子会社であるから、その地位は発行業者の同視しうるものである。
なお、原告が告示の「新聞を個別配達の方法により販売することを業とする者」=「販売業者」であることはいうまでもない。
(3) 1999年の告示改正の際に議論されていないことは、ただ単に議論されなかったというにすぎない。「発行業者」に販売会社を含まないという確認もなされていないことから明白である。
したがって、議論のないことが上記(2)の解釈を否定する根拠となるものではない。
(4) 告示第3項のような「不公正な取引方法」に関する違反行為については、独占禁止法には罰則が定められていない。独占禁止法の条文を見れば、明白である。
被告らの主張する「排除措置命令」や「罰則」とは、独占禁止法のどの条項に基づくものか明らかにされたい。【求釈明の申立】
(5) 以上のとおり、被告の主張は、独占禁止法や上記告示の趣旨に反する誤った主張である。
2 山陽新聞販売(被告岡山東販売)や被告岡山西販売による押し紙は独占禁止法2条9項5号に基づき公取委が指定する14項(一般指定)に該当することについて。
(1) 仮に上記被告らが「発行業者」ではないことから、同被告らによる原告への押し紙が「新聞業における特定の不公正な取引方法」に該当しないとしても、同被告らの行為は、公取委が指定する一般指定14項の優位的地位の濫用に該当する。すなわち、同項は「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること」とし、同項4号は「取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること」を掲げているところ、本件の押し紙は、まさに、上記被告らがその優位的地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に、原告に不利益を与えてきたものである。
(2) 押し紙に関する法的規制は、独禁法2条9項5項の優位的地位の不当利用に対応した規定で、一般指定でいうと14項に相当するものである。(甲5・236頁。甲6・182頁)。
したがって、上記被告らが「発行業者」にあたらず、同被告らによる押し紙が上記告示による特殊指定に該当しないとしても、その取引上の優位的地位を利用し、原告に対して押し紙を行って不利益を与えてきた以上、同被告らによる原告への押し紙は、独占禁止法の一般指定に該当する違法行為にあたるというべきである。
3 被告らによる押し紙は共同不法行為であること
原告の準備書面(1)第3で詳論したとおり、山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売は、いずれも資本的に被告山陽新聞社の支配下にある。また、山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売の役員は、現在すべてが被告山陽新聞社の役員又は幹部従業員により独占されている。しかも、そのほとんどが被告山陽新聞社の販売局の所属である。したがって、両被告の販売政策等に関する意思決定や業務執行は、被告山陽新聞社の支配下でなされていることは明白である。
したがって、山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売による押し紙政策についても、被告山陽新聞社の販売意方針に基づくものと考えざるを得ない。実際にも、原告が販売会社の担当者に対し、押し紙を減らして欲しいと要請したときにも、担当者は「本社(被告山陽新聞社)の指示があるから変更できない」とか「本社の意向があるから、販売会社では決められない」とか言って、これを拒んできたのである。
これらの事実からすれば、被告山陽新聞社は、山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売と共謀して、原告に対し違法な押し紙を行って不利益を与えてきたというべきであるから、共同不法行為責任を負うべきである。
4 山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売による押し紙が民法709条に該当する不法行為であること
(1) 被告らは、原告と山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売との取引行為について、原告の意に沿わないところがあったとしても、原告が諸々の利害損失を考慮して取引を続けてきたのであるから、押し紙があったとしても不法行為に該当しないと主張する。
しかし、被告らの主張は失当である。
(2) 原告は押し紙による不利益を甘受する経済的合理性がないこと
被告らが供給する押し紙によって原告がこうむる不利益=損失はきわめて甚大である。押し紙とは、原告にとって購読者がいないために購読料を回収できないにもかかわらず、仕入原価の支払いを余儀なくされるものであり、押し紙分は損をするだけなのである。原告の準備書面(1)添付の一覧表から明らかなとおり、原告は、押し紙によって毎月数十万円、原告が販売店を辞める直前には80万円を超えるような損失をこうむっていた。したがって、そもそも原告が押し紙による損失を甘受してまで、押し紙の取引を続ける経済的合理性はない。
被告らが引用する裁判例(乙5.乙6の1、2)によれば、これらのケースでは、押し紙があったとしても「多額の奨励金・補助金」や「折込広告手終料の上乗せ」という利益があることが押し紙の不法行為を認めない理由とされている。しかし、本件のケースでは、甲4の請求書をみれば明らかなとおり、原告が被告らから多数の押し紙を引き受けたとしても、なんの奨励金も補助金も出ていないのである。また、折込広告手数料についても、広告枚数が実売部数以下であるため押し紙分の上乗せのないものもあるうえ、1部当たりの折込広告手数料の金額は押し紙の仕入原価の半分にも満たない。かえって、被告らにおいて、原告への押し紙分を超える枚数の折込広告料を広告主からだまし取っている疑いすらある。なお、この点はおって詳細に主張する予定である。
したがって、被告らにおいて、原告が押し紙による利益をも考えて取引を続けてきたと主張するのであれば、どのような利益がいくら原告にあったのかを具体的に主張されたい。【求釈明の申立】
(3) 被告両名の責任原因は不法行為だけではないこと
原告の主張する被告両名の責任原因は不法行為だけではない。訴状の請求原因第6の1で詳論したとおり、被告両名には、新聞販売委託契約に付随して、原告に対して押し紙による不利益が生じないようにするため、注文部数(実売部数に2%程度の予備氏を加えた部数)を超えて供給してはならない義務がある。しかるに、被告両名はこれに違反して押し紙を続けたのである。したがって、被告両名は債務不履行に基づき、原告のこうむった損害を賠償する義務がある。
第2 上記被告ら準備書面(1)第2に対する反論
1 被告らによる送り部数(=「夕刊目標部数」)について
被告らは、原告主張の送り部数について間違いを指摘しているが、資料がないので確認できない。
2 目標数の合意という被告主張について
(1) 被告らは、山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売は販売会社であるから、販売部数を伸ばすことが同被告らと原告の共通の目標であることを原告は理解し、目標数を合意したと主張する。
しかし、そのような合意はない。仮にあっても無効である。
(2) 目標数とは、被告らによる原告への販売部数(送り部数)のことであり、実際の購読部数ではない。したがって、販売部数を伸ばすことが被告らの目標=販売方針となるのは理解できるが、それが増えることは原告にとって押し紙が増えること、すなわち損失が増えることであるから、原告の目標となるはずがない。
たとえば、2007年(平成19)年1月の実際の購読部数はセット・朝刊で1532部であり、注文部数(実際の購読部数に2%の予備紙を加えた部数)にしても1565部である。これに対し、被告らが決定してきた目標数は1899部である。(甲2の9)。実際の購読部数を実に367部も超えている。この目標数が「購読部数の目標」を意味するのであれば、実現不可能な部数を被告らが毎月毎月決定していたことになる。この目標数は、実際の購読部数を367部超える押し紙を原告に購入させるべく被告らが決定したものなのである。
ここで、再び1999年の告示改正の理由を見ておこう。「現行の規定の仕方からは、発行業者は、発行業者が販売業者の注文部数事態を増やすようにさせた上、その指示した部数を注文させる行為も規制されることが明確になっていないという問題があり、このような行為も明確に禁止の対象とする必要がある」とされている(乙3の2)。すなわち、発行業者と販売業者との合意に基づく押し紙も明確に禁止されたのである。
本件における被告らによる「目標数」の決定とその目標数に合わせた「仕訳日報表」の提出要求に基づいてなされた押し紙の供給は、告示によって明確に禁止された違法行為である。したがって、このような一連の行為による合意があったとしても、それは公序良俗に違反する違法・無効なものというほかない。
3 架空の領収書について
被告らは、当時の担当者が架空の領収書の作成を指示したことを否認しているから、そのような事実はなかったと主張する。しかし、原告にとって、そのような領収書を作成する必要もない。担当者が原告に指示したのは、原告自らが何十部もの新聞を購読しているように読者一覧表に掲載させたことであり、その結果、架空の領収書が出来てきたにすぎない。担当者らの意図はABC部数調査に備えるためである。ABC部数の意味などについては、追って主張する予定である。
第3 上記被告準備書面第3について
1 被告山陽新聞社による他の被告らに対する支配について
(1) 被告らは、被告山陽新聞社が保有している被告岡山東販売の株式が全株式の66.37%であるから、持ち株の3分の2に達しておらず、同被告を支配できる状況にないと主張する。
しかし、残りの33・63%は、被告山陽新聞社の役員または関係者が保有しているはずであるから、被告山陽新聞社が被告岡山東販売を実質的に支配していることは明らかである。
被告らは、被告岡山東販売の株式の全保有者と保有株式をあきらかにされたい。【求釈明の申立】
(2) 山陽新聞販売出身の役員は一人だけであること
原告の準備書面(1)第3の2で詳論したとおり、山陽新聞販売(被告岡山東販売)の役員11名のうち山陽新聞販売の出身者は鈴木勝利氏一人だけであり、代表取締役を含め他の役員はすべて被告山陽新聞社の役員及び元社員である。また、被告岡山西販売の役員5名は全員が被告山陽新聞社の役員及び元社員である。以上については、被告らも争わない。
したがって、山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売が被告山陽新聞社の意のままになることは明白である。
(3) 販売センターの目標数や実売部数は山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売が管理し、被告山陽新聞社が関与していないとの被告主張について
被告らの上記主張は、失当である。
山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売の各取締役には、いずれも被告山陽新聞の販売局長または販売局次長であった者が多数就任しており、被告山陽新聞社の販売政策・販売方針に基づいて押し紙が行われていることは明白である。
2 山陽新聞販売(被告岡山東販売)及び被告岡山西販売が原告に対して優位的地位にあること
被告らは、上記被告らが原告に対して優位的地位にあるわけがないと主張する。しかし、上記被告は原告に対し、「目標数」を一方的に通知し、それに合わせた「仕訳日報表」を提出させていたのである。原告は多数の押し紙があるにもかかわらず、被告らの決定した「目標数」に合わせた「仕訳日報表」を提出しなければいつ改廃されるか分からない状況のもとで取引を続けていたのである。
被告らが原告に対して優位的地位にあることは明白である。
以上
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